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9.同じところに何度も行こう11.洋館めぐり


少し前までは28mmレンズ一辺倒で、50mmレンズはすごく使いにくいものだと思っていましたが、最近は50mmレンズばかり使っています

50mmばかり使う理由は、ごく簡単なことで、その画角に慣れるとすごく使いやすいからです。

最近は町を撮ることが多いのですが、気になる細部を撮る場合に、広角レンズのように寄る必要はないですし、邪魔な背景をボカして整理することもできます。また、町並み全体を撮る場合にも、画角が比較的狭いので不要なものをフレームアウトしやすいのも美点です。更に、明るいので室内を撮る場合にも手ブレしないシャッタースピードを確保することができます。

広角や望遠のような個性の強いレンズは被写体を選ぶ傾向があるのに対して、標準レンズはその傾向が弱く、幅広い被写体に対応できるようです。ただ、慣れないとどうでもいい面白くもなんともない写真ばかり生産してしまうことになりがちで、私も多少そういう傾向があるのですが、それを克服するのもまた楽しい。


50mm付近の焦点距離のレンズを「標準レンズ」と呼ぶ理由については諸説あって、サイト上でもいろいろと書かれているので、ここでは割愛します。だいたい、現時点において50mmレンズを標準として使ってる人なんてあんまりいないですから、特にそれについて言及する意味はないように思います。基準となるレンズは被写体によって、好みによって変化するものですから。


ただ、現在の私にとっての標準は50mmで、どんな被写体があるか分からない初めて行く町には絶対に持っていきます。これさえあれば何とかなる、という安心感があります。

それに、開放F値が明るいのでファインダーが明るくなり、MF一眼レフを使う場合はピントが合わせやすくなりますし、視界が明るいと気分もよくなります。

また、前記のように室内でもブレずに撮ることができます。町屋の室内は雰囲気がよくて被写体として魅力的な場合が多いので。


あと、嬉しいのがコスト・パフォーマンスの驚くべき高さです。

私が欲しいと思うレンズの多くは生産が打ち切られており、中古でしか手に入らないものがほとんどです。私が探しているのは1970年代に作られた一眼レフ用のレンズですが、その頃はカメラと50mmレンズをセットで買う人が多かったようです。今の標準ズームレンズみたいなものですね。そういうわけで、中古市場に豊富にあるようです。だから、ポピュラーなものだと同じ種類のレンズが2、3本置いてあって、しかも安い、ということになるのだと思います。だって、1万円しないものもわりとありますからね。それくらいの値段だと、あまり悩まずに買えます。


私が最近注目しているのが、小口径の50mmレンズです。私が探している時代のレンズになると、F1.4が標準的で、F1.2以上が大口径、F1.7、1.8、2あたりが小口径になります。

私はニコン用のF1.2という大口径レンズを持っていますが、これが重い。カメラに付けて首から提げると、重さで猫背になってしまうくらいです。調べてみたら360グラムあります。カメラと合わせて900グラムですから、やはり重いですね。

最近購入したOM-1にF.ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8という、わりと古めの小口径レンズが付いていたのですが、これが実に165グラムしかありません。カメラと合わせて675グラム。すごく軽くて散歩するのも楽です。

しかも、高価な大口径レンズの方が安価な小口径レンズより性能がいい、というわけではないのが面白いところです。大口径レンズを作るには無理がかかるようで、収差補正のために多くのレンズを必要とします。そのせいで重く大きくなっているわけです。対して小口径の場合は無理がかからないので、性能を維持したまま小さく軽くすることが可能なのです。

安くて、軽くて、性能もちゃんとしている、何と言うか庶民的で実用的な小口径の50mmレンズに親しみを感じているのです。小さいんだけど、持つとずっしり重くて「ちゃんと作ってある」という安心感があります。こういうレンズをお気に入りのカメラに散歩すると、ファインダーもわりと明るいですし、いい写真が撮れそうで楽しくなります。


2002年7月31日