Canon FTb-N
2003年11月11日に八百富写真機店で購入。レンズ付きで税込み1万9425円。キヤノンのMF一眼レフに興味があったのと、黒い金属製カメラが欲しかったのが理由。プリズムに腐食があったので、購入後すぐにプリズム再蒸着と各部点検(モルト張替、露出計調整、シャッター速度調整)を日研テクノに依頼しました。費用は税込みで1万8000円強。安くないですが、安心して使えることを考えれば出せなくはない金額です。
左の画像のフードはヤフオクで1100円で落札。バヨネット式で金属製のしっかりしたものですが、固定用のゴムが劣化していたので、手近にあったもので代替品を作って交換してあります。いろいろと手のかかるカメラです。
このカメラは、F-1と同時期に発売された開放測光機であるFTbの改良版として1973年に発売されました。ボディサイズ、スペックともに当時としてはごく標準的ですが、部分測光というところだけは凝っていて、フラッグシップのF-1と同じだということです。測光範囲がはっきりと分かるので、慣れるとすごく使いやすい方式です。
私が持っている一眼レフの中では、ニコマートFTNに次ぐ重量級で750gもあります。またレンズも重いものが多く、どうしても1kgを超えてしまいます。手に持って写真を撮っている分にはあまり苦痛を感じませんが、首から提げたり、バッグに入れたりして歩いていると、すごく重くて肩が凝るくらいです。
注意点はファインダー関係。プリズムが腐食しやすい設計になってしまっているようです。またフォーカシング・スクリーンもミラーボックス側にマット面等のギザギザがあるので、劣化したモルトが付着して汚くなることが多いようです。プリズムの再蒸着と、綿棒やアルコールを使ってしつこく清掃した結果、気にならない程度には綺麗になりましたが、購入の際には仔細にチェックされた方がいいと思います。後者は自分で何とかできますが、前者はお金がかかります。
またブラックの塗装はF-1と違って高品質ではないために、はがれている個体をわりとよく見かけます。私のカメラもカメラ名の下のあたりと、向って右のアイレットの下にはがれがあります。摩擦で下の金色が出るのは雰囲気があって悪くないですが、はがれてしまうのはどうしようもないですね。
デザインは「普通」です。「キヤノンさん同じ金型を流用しすぎじゃないの?」という気がするくらいの変わり映えしないというか、「昔の一眼レフ」的な新鮮味のないデザインです。
こうして書くと問題の多いカメラのように思えますが、そうではありません。シャッターの感触もぶっきらぼうながら、悪くない。その切れのよさとボディの安定感からして、ブレる気がしません。またファインダー内にシャッター速度が表示され、絞りに半段ごとのクリックがあるのも親切です。露出計の指針も見やすい。触っているといいカメラだなあ、と分かります。あと、フィルム簡易装填方式QL(QuickLoading)も意外と便利です。
レバー操作マニュアル
FTb-Nのレバーは便利なものですが、説明がないと操作法が大変分かりにくいものです。それに、古いカメラですから使用説明書なしで購入される方も多いだろうと思い、ここに紹介する次第です。ここに記した説明は純正の説明書を私なりに分かりやすく要約したもので、写真や図は私のオリジナルです。
レバーの説明
1:絞り込み測光レバー兼セルフタイマーレバー(以下レバー1)
セルフタイマーとして使う場合は、フィルムを巻き上げ、レバーを左に180度回し、シャッターボタンを押せば、約10秒後にシャッターが切れます。
レバーを右側に倒せば設定した絞りまで絞り込まれ、プレヴューとして使えます。
2:絞り込みロックレバー兼ミラーロックレバー(以下レバー2)
開放測光
FD、NewFDレンズなど、開放測光に対応したレンズを使う場合は、この状態で使います。
レバー1は垂直、レバー2は「・」位置にあり、マウント内の自動絞り作動レバーは右側で、レンズの絞りは開放状態にあります。このままシャッターを切れば、自動絞りレバーが作動し、瞬時に絞り込まれます。
絞込測光
FLレンズなど、絞込測光にしか対応していないレンズを装着した場合に、この状態で使います。
レバー1を倒したまま手で押さえても問題ありませんが、レバー2を「L」位置にした方が、ピントや絞りの操作が楽になります。
絞り込むと露出計の追針(頭が円形の針)は下方に逃げますから、以下の方法で露出を合わせます。
絞込測光時の露出の合わせ方
右図はファインダーの右側だけを模式的に表したものです。
前述のように追針(頭が円形の針)は下方に逃げ、開放測光時と同じように指針と追針を合わせる方法は使用できず、指針を定点に合わせることで露出をセットします。定点の中央が適正で、上下で約1/2段になっています。
ミラーアップ
開放測光状態からレバー1を右側に倒しながら、レバー2を「M」位置にまで動かすと、ミラーが上昇した状態で固定されます。
レバー2を「・」位置に戻せばミラーは降下します。
クイックリターン式ミラー作動時の衝撃を嫌う撮影状況や後部が突出しているFL19mm F3.5を使う場合に使用します。