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5.中判カメラ7.EOS650


ペンタックスSシリーズというのは、私が勝手に呼んでいるだけで、正確に表現するとすれば、ペンタプリズムを載せたアサヒペンタックス(通称AP)を始祖とする一眼レフのシリーズ中で、モデル名の頭にSが付くカメラ、となります。ただ。面倒なので以降ペンタックスSシリーズと呼称します。

これらのカメラの存在は以前から知っていましたが、最近興味を持つようになった直接のきっかけは、コシナが発売するBessaflex TMを知ったことによります。

このカメラが採用しているM42マウントは、すでに絶滅したマウントではありますが、多くのレンズがあって、しかも中古市場ではすごく安いものが多い。あと、いろいろな国で作られているので、面白いレンズも多いという、興味深いマウントなのです。一応、私もSuper Takumar 55mm F1.8(LINK)というペンタックス製のレンズは持っていて、ペンタックスMXに純正のアダプタを噛まして、写真を撮ったことがあります。しかし、絞り込み測光はやはり不便で、実用するには至っていません。

そういうときに、コシナがM42マウントのカメラを発売なんかするもんだから、失せかけていた興味が再燃したわけです。

Bessaflex TMの問題は、カメラとしてあんまり恰好よくないことと、絞り込み測光であること。M42マウントでいろいろなメイカー間の互換性を確保しながら開放測光にすることは大変難しいことは分かるんですが、不便であることに変わりはないです。そんなことをするくらいなら、露出計で測った方が早いんじゃないか、と思います。あと、5万円もすること。新品の信頼性はあるとしても、ちょっと高い。そこで、そういうことなら古いペンタックスのカメラと露出計を買えばいいんじゃないのか、というわけで「ペンタックスSシリーズ」という選択肢が浮上してきました。


PENTAX SV & SP

Sシリーズは古いものからS2、S3、SV、S2 Super、SP、SL、SPF、SPⅡとありまして、機能的に分類すると、S2が半自動絞りでS3からが完全自動絞りになり、SPで露出計(ただし絞り込み測光)が内蔵され、SLはその露出計なし仕様、SPFは開放測光、SPⅡはSPのリバイバル版、ということになります。私はデザインという面から、SP以降はちょっと受け入れがたいと思っています。ここに載せている2枚の画像を比較して戴けると分かると思いますが、SP以降はエプロンの金属部分がなくなって、肩が高くなっています。これが恰好よくないと思います。やはり、それ以前の方がデザインに品があります。完全に好みの問題ですけどね。

また、実用する上で自動絞りは必須だと思うので、S3からS2 Superがいいようです。このふたつならどちらでもいいんですけど、中古カメラ屋さんの店頭やオークションなどを見ると、SVが多いようです。それにS2 Superはカメラには「S2」としか刻印されておらず、フィルム・カウンターが手動セット式か自動復元式かで見分ける必要があり面倒なのもあって、SVがいいな、と今ところは思っているわけです。


このあたりまでは「M42マウントのレンズって面白そう」という興味が発端ではあったものの、今ではペンタックスSシリーズ自体に魅かれています。完全自動絞り対応後でSP以前のペンタックスの一眼レフは、そのバランスがすごくいい。上品なデザインのボディの中に、ペンタプリズム、クイック・リターン・ミラー、一軸不回転シャッター、自動絞りというモダーンな一眼レフに必要な機能を搭載している。これ以上何がいるんだ、という気もします。私はこういう実用的かつ趣味的、そしてシンプルなカメラが大好きなのです。


SVの中古相場は、前掲のSuper Takumar 55mm F1.8付きで1万5000円程度のようです。あるお店で保証なしボディのみ7500円、というのを見たことがありますが、ちょっと怖いですね。修理前提で買うのなら別ですけど、こういうカメラは修理できないこともあるわけで。やはり、一応は信頼できるものを買いたいものです。

あと、できればブラック・ボディがいいな。私が今持っている一眼レフは全てクロームなので。

2003年6月15日



前回の文章を書いたちょうどひと月後の7月15日、ペンタックスSVを購入しました。


少し前に購入したOM用ズーム・レンズにリアキャップが付いていなかったので、それを探しに、梅田に行きました。すでに生産中止になっている代物で、どこにでもあるわけじゃないのです。それで、以前置いてあることを確認していた、JR大阪駅からほど近い八百富写真機店に行くことにしました。ここはペンタックスSシリーズの在庫が比較的多いことも知っていたので、ついでにちょっと見てこよう、とは思っていました。

それで行ってはみたものの、リアキャップはありませんでした。ないものはどうしようもないので諦めて、ペンタックスSシリーズを見に、ペンタックスのショーケースに向かいました。だいたい人気のあるカメラが上の方にありますから、あまり売れなさそうなSシリーズは下のほうで、ちょっとかがんで値段を見ました。正面にはペンタックスSLが1万5000円で、その横にはペンタックスSPが1万1000円で並んでいます。SPⅡとかSPFはわりと高くて、隅の方に1万円台後半から2万円台半ばまで。そして奥の方には保証なしのSVやS3が1万円を切る価格で並んでいました(すべて標準レンズ付)。その中で目が行ったのは、8500円のSVでした。これならお金の問題を気にせずに買えるな、と。レンズなしで7500円くらいのものもあり、レンズ付きと比較すると安くないなあ、レンズは全く不要である、というなら別だけど、と思いつつ見ていました。


私の金銭感覚からすると、機械式の一眼レフカメラが一万円を切るとすごく安いと思います。保証なしとはいえ、故障しているわけではないでしょうから、まあ多少の不具合があっても納得できるんじゃないか。このあたりの論理がもうすでに購入を視野に入れて、自分の説得にかかっている、と言えないこともないですが、そう思いました。

でも、買うと決心してないのにカメラをショーケースから出して見せてもらうのには、わりと勇気が必要です。私としては、保証なしのヤツにはどういう不具合がある(あるいはない)のかな、ということが気になってはいるわけです。とはいえ、もし見せてもらって不具合があれば「うーん、これはちょっと」などと言いながら買わなければいいわけですが、不具合がなかった場合、すごく返しにくい。何と言えばいいのか私には全く見当がつきません。そんなわけで、「不具合がなければ買う」と決めていないその段階では、見ているだけでした。安いな、と。


まあ、ショーケースの前にずっといるわけにもいかないので、ヨドバシで父に頼まれたものを買って、ないだろうとは思いつつ、OMレンズのリアキャップを探しに行きました。結局なかったですけど。それと、ヨドバシには中古カメラも売っているので、ちょっと見に行くと、露出計が死んでいるらしいSPが1万円くらいで置いてありました。ここは保証なしなので、あまり惹かれる代物ではありません。

それとカメラ書籍のコーナーで、「ペンタックスの軌跡」というアサヒカメラに掲載されたカメラの詳細なテスト記事をまとめた本があったので、ちょっと読んでみました。それによるとS3までのカメラはフィルム巻き上げの前後でミラー位置が微妙に違うんだそうです。私が欲しいと思っているSVではその問題が解決されているらしく、SVなら普通に使えそうだな、と思いながら読んでいました。


このまま帰るのでは収まりがつきません。梅田にはいろいろと中古カメラ屋さんがあるので、ペンタックスSシリーズはどれくらいの程度のものがでのくらいの値段で売られているのか、相場を見に行こうと思いまして、記憶を頼りに捜し歩きました。一番近いのは前述の八百富のクラシック・カメラ部門で、ここにはAPとかKといったプレミアが付いている、Sシリーズの始祖と言うべきカメラしか置いてなくてパス。前はここにもSシリーズがあったんですけど、移動したようです。

私が興味の対象として、価格を見てまわったのは、SVとSL、そして露出計が生きているSPです。スタイルとしてはSV、実用的な耐久性という意味では比較的新しいSL、露出計はあると便利なので、露出計が生きているのならSPも悪くはない、ということですね。

そういうことを思いながら何店舗かまわりました。その結果、八百富が一番安いことが分かりました。だいたい他の店にはSV以前のカメラはない上に、SPとSLがあったとしても保証がないのに、1万5000円くらいします。これはやはり保証なしのSV、8500円かな、ということを考えつつ八百富に戻りました。

私などはここでスパッと件のカメラを出してもらって、明らかな不具合がなければ買う、と決断できるような性格ではありません。またショーケースの前にしゃがんで、1万5000円のSLは保証付きだし綺麗だし、実用にはいいかな、とか、1万1000円のSPも露出計が生きているなら買いかも知れない、お、同じ値段のSPが他にもあるな、とか、SVもS3も値段はそんなに変わらないから、買うならやはりSVだな、とか、そういうことをウジウジ考えながら見ていました。

そこで発見したのです。ペンタックスSシリーズの棚は最下段だけだと思っていたのに、その上の段にもたくさんあることを。カメラを斜めに向けてびっしりと並べてあったので、気付かなかったようです。そしてそこに、保証なしレンズ付き8000円のSVが4台並んでいるのを見つけました。安い。それに付いているのと同じレンズを私は4800円で買っているので、まあ程度が悪いとしても壊れていないなら2000円くらいはするでしょう。となると、ボディは6000円か? そして、そのうちのひとつに付けられているタグには「動作OK」と書いてあります。おー、これなら買ってもいいな。

とはいえ、露出計への未練はありまして、1万1000円のSPも気になっていました。1万5000円のSLはここにきて脱落。デザインとしてはSVが好きなので、わざわざ7000円も余分に出して、好きでもないSLを買うことはなかろう、と。


優柔不断な私もここで決心しました。「SPの露出計が生きていて、不具合がなければ買う。ダメならSVを見せてもらう。」それで「すいません、ちょっとカメラを見せてもらいたいんですけど」と店員さんに声をかけました。声をかけるタイミングをはかるのに、5分くらい要しましたけど。


それで出してもらいながら「このSPって露出計は動いてるんですか?」と一番気になっているところを質問。店員さんは、故障と明記してないのなら動くはず、というような回答。それで、よしよし、それはありがたい、と思いつつ、触らせてもらいました。でも、操作すると露出計は動きません。「動いてないみたいです」と言って店員さんに渡すと、電池がないことが判明しまして、アダプターなどを探して新品の電池を入れてくれました。でも、動かない。もう一人の店員さんも確認してくれましたが、同様の結果。あと、私が使っている上で気付いた不具合もありました。まずシャッター幕を初めとする各部がカビていること、そして露出計のスイッチを入れたままでシャッターを切っても、切れないこと。何か連動に問題があるみたいです。これはちょっと買えないなあ。

前述のように他にも同じ値段でSPが何台かあったんですけど、また同じような確認作業をするのは大変なのと、SVの方がやっぱり恰好いいなあ、ということで、8000円のSVを出してもらうことにしました。4台あるので、一番外観の綺麗なものを出してもらいました。

PENTAX SV

綺麗といっても、美品というわけじゃなくて、多少の傷はあるんですけど、あまり気になりません。各部を操作してみても問題はないみたいです。シャッターもちゃんと切れています。シャッター幕もカビなし。モルトプレンも生きています。自動絞りもきちんと作動しているみたいです。これは問題なさそうだな、と思ったものの、他に3台あるわけで、やはりそれも見たい。頼むと快く見せてもらえました。外観とシャッター幕とモルトプレンくらいしか確認していませんが、結局初めに出してもらったヤツが一番いいように思えたので、それを購入。Sマウント用ボディキャップとレンズのリアキャップも合わせて購入しました。こういうのをまだ生産しているペンタックスは偉いと思います。

カードで買ったので、サインをして、店員さんは店員さんで何かを書いたりしているわけですけど、なんとケースがついているらしいです。そんなのいらない、と思う人もおられるでしょうが、私はカメラ・ケースが好きなので、すごく嬉しい。あとストラップと。どんなのかな、と思いながら店員さんが探しているのを待っていると、すごく大きいケースが出てきました。ペンタプリズムの部分が異様に大きいんです。たぶん外付けの露出計を付けたまま仕舞えるようになっているんだと思います。すでにちゃんと動作する露出計は売ってないでしょうし、あまり恰好いいものでもないので私は付ける気はありません。そうすると無駄に大きいという印象は拭えないわけで、ちょっとがっかりでした。OM-1やレチナに付いてきたシンプルでぴったりフィットするケースを期待していたもので。


ともかく、これでペンタックスSVは私のものになりました。でも、買った時点でめでたしめでたし、というわけには行かないのがカメラです。ちゃんと写真が撮れないと意味がないわけですらかね。

保証なしですけど、致命的な不具合(撮れないとか)がある場合は、だいたい返金だか交換はしてもらえる(確認したわけではないですが、普通はそうです)ので、できるだけ早く試写をしたい。

ちょうど天気もいいし、フィルムも手近で調達できるし、というわけで、ヨドバシでISO100のネガを買いました。それで梅田と帰り道で24コマ撮り終えました。露出は勘。だいたい太陽の下、日陰、もっと日陰、暗いところの4段階くらいに調整すれば、ネガカラー・フィルムの場合問題なく撮れます。今確認したいのはシャッター幕の不具合による露出ムラの有無と、ボディとレンズの自動絞り機構が機能しているかどうかですから、そういう適当な露出で問題ないわけです。

そのフィルムをいつものカメラのキタムラに現像に出しました。ここはプリントがちゃんとしているので、信用しているのです。もうすでに夕方でしたし、現像ができるまでの1時間を待つのも馬鹿みたいなので、次の日に受け取ることにしました。


でも、これが失敗のもとでした。ちゃんと撮れているか心配で心配で。帰宅してカメラの汚れをふき取っているときに、気付かなかった裏ブタの錆を発見した(店頭ではある種の興奮状態にあるので、こういうのはよくあります)というのもあるんですけど、マトモなカメラを8000円で売るなんてことはしないんじゃないか、安かろう悪かろう、ということなんじゃないか、と心配でなりません。しかも、ネットで検索するとSVまでの機種はシャッターがよく故障するとか書いてあって、もう落ち着かない。


それで次の日。ちょうど大学が休みだったので、朝のうちに受け取りに行きました。カメラのキタムラに向かうバスの中でもすごくドキドキしました。結果は問題なし。露出もネガのラチチュード内に入っていましたし、ピントもちゃんと来ています。帰宅してからネガを仔細に観察しても、問題はありません。やった、ちゃんと撮れる。試写の時に、巻き上げレバーの感触のよさや、ファインダーは暗いものの、ピントの会わせやすさは実感していたので、そういうモノとしての魅力に溢れたカメラが使える、ということがすごく嬉しい。あまりの嬉しさに、購入価格を大きく超える費用を払って、オーバーホールしてもらおうか、と考えてしまいます。

2003年7月20日


PENTAX SV

M42 mount Lenses