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1.趣味の道具としてのカメラ3.レンズについて


カメラがないと写真は撮れない。それは事実です。しかし「カメラが何台も欲しい」と願う気持ちは「写真を撮る」という行為からは少し離れています。

ただ、その見極めは難しい。写真のために必要な場合だってあるからです。私はデジカメを2台持っていましたが、使うほどにその画質、色再現に嫌気がさしてきて、使用頻度は低下を一途をたどっていたのです。ちょうどそういう時期に、父からフィルム・カメラを譲り受けて、その画質と色再現の自然さに愕然とし、デジカメから移行する決心をしました。

そのまま、父から譲り受けたペンタックスMXでせっせと写真を撮っていたら、こういう文章を書く必要もなかったんですけど、直後に安心して使うことができる新品の一眼レフを買ってしまいました。理由は故障に対する心配をせずに写真を撮りたかったから、です。ペンタックスMXは25年も前に購入してから、一度も調整していない代物でしたから、酷使するのはよくないでしょうし、いつ故障しても不思議はない。だから、NewFM2を新品で買い求めたのです。


安心感、信頼感、質感は、写真を撮ることとは直接関係ないように思えます。しかし、私にとってこれらの充足は写真を撮ることと大きな関係があります。信頼できないカメラを持って写真を撮りに行きたくありません。やはり、確実に撮れているという信頼に裏打ちされた安心感が必要ですし、それを感じられるかっちりとした操作感、質感が欲しいと私は思います。私はそういうものを求めてNewFM2を買いました。安心感、信頼感というところまでは、必要だと思う人が少なくないかも知れません。意見が別れるのは質感、操作感でしょう。カメラを単なる道具だと考え、写真がちゃんと撮れるものであれば、質感や操作感に頓着しない人もいれば、私のように道具には機械としての信頼性を触覚で感じられる質感や操作感の高さが必要だと考える人もいます。また、質感、操作感ではなく、多機能さを求める人がいるかも知れません。使わないかも知れないけど、高性能であらゆるシーンに対応できるカメラじゃないと安心できない、というパターンです。

私の考えでは、これらはどれも安心感、信頼感という精神的な安定を得るためのものであるという意味で、写真を撮るのに必要なものであると思います。精神的なものというのは信仰みたいなもので、他の人は理解できなくても、その人にとってはすごく大切なものです。すなわち、これはいいとか悪いという次元の問題ではないということです。その人が質感なり機能を求め、得ることで、写真をよりよく撮れるというのなら、それを否定する根拠はどこにもないだろうと思います。


しかし、これがとことんまで進行して、写真をロクに撮らずに「この巻き上げの感触が…」とか「このファインダーの見え味が…」という世界、若しくは「このカメラは1/12000秒までシャッターが切れるんだ」とか「巻き上げ速度が秒間8コマだ」というような世界に没入するようになると、写真を撮る道具としてのカメラ、というよりは、目的としてのカメラ、ということになります。もちろん、それは否定されるべき嗜好ではありませんが、私はカメラは使わないと意味がない、と考えているので、やはり写真を撮る道具としてカメラを扱いたい、と思っています。


こんなことを書くのは、現在、「質感」という面で、ペンタックスLXとかニコンのF3に魅力を感じ、欲しいと考えているからです。どちらもレンズを持っているばっかりに、ボディさえ買えば使えるという魅力があって、6万円台でいいのがあったりしたら、買ってしまいそうになるかも知れません。やはり質感の高さは魅力です。

しかし、自分でも分かっていますが、これは全然写真とは関係のない、カメラの趣味なのです。私が持っているペンタックスMXとニコンのNew FM2に「写り」という面で不満を感じたことがありません。その上でLXやF3を買う意味があるのか、というと、全くないんですね、これが。ただ、機械としてLXやF3が魅力的だから、というだけで欲しい。そんなことをしているお金があるのなら、どんどん写真を撮って腕を磨いていくべきだというのも分かっています。分かったから、はい、すぐに興味がなくなりました、というのならこんな文章は書きません。


私はまだそういう症状が出るのはボディだけのようです。レンズについては、実用的なものにしか興味がありません。本当に実用一点張り。例えばMX用で35mmも50mmも持っているので、New FM2は今ある28mmだけである程度はやっていこうと考えていますし、もし何か買うとしても、中望遠レンズかマクロだろうと思っています(ただ、今のところ必要性を感じていないので買う気はありません)。28mmの画角が気に入っているし、MX用のレンズもあるので、カメラ2台を交替で使いながら(あまり毎回使うとカメラに悪いかな、と思うので)まずは28mmという画角で撮ろうと考えているのです。気分転換として35mmにしたり、50mmを使ったりということはあるにしても、基本は28mm。基本レンズを決めておく方が使いやすいと経験上思いますから。

また、焦点距離28mmと言っても、私が持っているのはペンタックス用、ニコン用ともにF2.8の廉価モデルです。どちらにもF2のモデルがありますが、大抵の場合絞り込んで使いますから、わざわざ高い大口径レンズを買う必要なんてないですからね。

まぁ、カメラ系物欲を絶てないことはよく分かっていますし、無理に我慢しても、気になって写真を撮れなくなる可能性もなきにしもあらず、というとこなので、ある程度は発散していくことになるでしょう。しかし、「写真が趣味です」と言える状態でいたいとは思っています。断じて「カメラが趣味」ではない、ということです。


2001年8月10日
加筆:2003年9月16日