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3.デジカメもやるじゃないか


この文章では、低価格化が進んでいる「大型撮像素子搭載デジカメ」について論じたいと思います。この言葉は私の造語で、「ディジタル一眼レフ」という言葉を使うと切り捨てられてしまうような、撮像素子は大きいけど、一眼レフ形式ではないカメラにも興味があります。

既存の製品ではエプソンのR-D1がほとんど唯一ですが、要するに画質さえよければ一眼レフという形態にはこだわりません。ただ、長いし表現としてももってまわった感じが否めないので、以下では「ディジタル一眼レフ」で統一します。


まずは以下に、私の現在までのデジカメとフィルム・カメラをめぐる出来事を記してみたいと思います。

2000年5月 デジカメを購入

しかし、徐々にデジカメの画質と操作性に疑問を持ち始める

2001年5月 父からペンタックスMXを譲り受けたことでMF一眼レフに移行

その操作性、質感、そして色と解像力に衝撃を受ける

2003年1月 E950とSX560を購入したことにより一時期デジカメを併用

しかし、色の悪さ故、次第に遠ざかる。リバーサル・フィルムを使い始めたことも遠因

2004年6月 イクシ・デジタル300a購入

その色と操作性のよさ、優れた携帯性に感心している


ここで説明しておかなければならないのは、イクシを購入した理由です。

一番大きいのはランニング・コストです。一番安い36EXのリバーサル・フィルムでも600円、現像代が720円ですから、36EXに38コマ撮るとして35円/コマ。もし散歩に行って2本消費すれば2640円かかります。だいたい私は月に200コマ程度撮りますからフィルムとその現像だけで7000円かかるわけです。この他にマウントやファイルも必要ですから、まあ8000円/月くらいはかかっているはずです。デジカメを使えばこのコストを全てカットすることができますから、金銭的に裕福ではない私としては考えないわけにはいかない。

そして、私が写真を公開しているのはネット上のみである、という事情もあります。フィルムをスキャンするよりも撮影したらすぐディジタル・データとして保存されるデジカメの方が便利です。この「便利」というのが曲者なんですけど。


フィルムとディジタルを比較する上で考えるべきは、その土俵です。

リバーサル・フィルムの場合は原版をライトボックス上で見るのが一般的ですし、デジカメの場合はPCのディスプレイで見るのが大多数だと思います。この場合、私が今まで見た限りでは前者が綺麗だと思います。色の鮮やかさが違います。ディジタル画像は1677万色の幅しかないドットの集合ですから階調とシャープネスには限度がありますし、それを出力するディスプレイの色再現の問題もあり、やはりポジ原版には劣ってしまうように思います。

ただ、最終的にディジタル・データとして公開する私の場合、ディジタルとして綺麗であればそれでいい、という面一方ではあるわけです。その意味において、ディジタル一眼レフに不満はありません。私が所有しているスキャナの性能を考えると、フィルムで撮ったスキャンするよりもディジタル一眼レフで撮る方が綺麗なのかも知れません。だいいち手間がかからず楽ですし。


画質以外のカメラ自体についても考えたいと思います。

性能について文句はありません。私が所有しているカメラのほとんどより高性能でしょう。また、ホワイトバランスや色再現といった面倒な問題はRAWで撮ってPCで展開したのちに調整してやれば、撮影しながらシビアに設定せずに済みます。メモリ容量は喰いますけどね。あとはその展開ソフトの使い勝手ですが、これは実際に使い始めたときの話です。

価格的にもディジタル一眼レフは新製品が発売されるサイクルが短いので、少し前に出た機種も型落ちであれば意外なほどな安価で買うことができます。また、最近では新品でも7万円以下でボディとレンズを購入することができるようになりました。


なのに、私はなにをうじうじ考えているのか。なぜディジタル一眼レフを買わないのか。


ディジタル・カメラのアドヴァンテージは上で説明したように理路整然として分かりやすい。便利だ、と多くの人が思うことは確かだと思います。でも、人間というのは理性だけで生きているわけではない。あるいは理性なんて西洋近代思想が生み出した幻想じゃないか、と私などは思うんですけど、要するに気持ちいいか気持ちよくないか、好きか嫌いかという気持ちというか感覚の方も大切です。

デジカメって気持ちよくないんですよね、使っていて。イクシ・ディジタル300aは気に入って使っていますが、それは画質がいいからです。それにコンパクトで、ちょっとカメラでも持っていくか、ということになりやすい。でも、それでもフィルム・カメラをメインに使っているのは画質がいいのは当然にしても、使っていて気持ちいいからです。手ごたえがある。

そして、フィルムという原版がある強さ。私はディジタル・データの保存性についてはほとんど信用していません。ハードディスクがクラッシュすれば一発ですし、バックアップをとるにしても膨大な容量が必要になります。また同じディスクに保存するのは不安なので、万全を期すならば物理的に別のドライヴを用意しないといけない。

また、PCと不可分のシステムなのも気に喰わないところです。PC操作は不得手な方ではありませんが、PCを使うこと自体はあまり好きではありません。便利だから使いますけど、使わなくて済むならその方がありがたい。フィルムはPCなしで撮影から現像まで可能ですし、もしディジタル化したければフィルム・スキャナを使えばいい。


何か自分で書いていても説得的じゃないな、と思います。やはりこのディジタル一眼レフに対する抵抗感を説明するのは難しいです。単に頭が古くて、懐古的なのかも知れないし、そうだとしても私はフィルム・カメラをメインに使う、ということは確かです。


ただ、カメラを1台しか持ってはいけないわけじゃないし、実際に私は莫迦みたいな数のカメラを持っています。その考えでいけば、フィルム・カメラが主であるとするならば、従のカメラとして大きな撮像素子を搭載したデジカメは使い道があります。趣味はフィルム、ネット公開という実用にディジタルという使い方です。

イクシ・ディジタル300aの画質はいいんですけど、ラチチュードはびっくりするくらい狭く、その範囲を超えると見苦しい感じに飛びます。あれくらいのサイズでもっと腰のある画像が手に入るデジカメがあればなあ、とは常々思っていますが、一眼レフタイプがほとんどで、コンパクトなものには大きな撮像素子は搭載される気配はありません。フィルムの世界でも「高級コンパクト」があるわけですから、デジカメでもあるといいなあ。そういうのが15万円くらいなら私は買う。


2005年6月12日
加筆:2005年11月3日