モノクロフィルムを自家現像

2025年2月27日に注文し、3月20日に届いた「Lomo Daylight Developing Tank 35mm」(以下LDDT35mm)でモノクロフィルムを自家現像すべく、準備を進めています。

LDDT35mmが便利なのは、撮影済みのフィルムをリールに巻き付ける作業をライトの下でできる、という点です。ダークバッグの中で手探りでパトローネからフィルムを引っ張り出し、リールに巻き付けるのに慣れが必要らしく、フィルムどうしがくっついたままだと現像不良が発生してしまいます。それが簡単・確実にできるのが便利そう、と思って買いました。10,980円。ダークバッグと現像タンク代として考えれば高くはない。135フィルムを1本ずつしか現像できないので、1回で2本以上できるタンクと比べると面倒な面はあると思います。私はほとんど1本しか撮らないこともあり、まずはこれで充分だろうと考えました。

2ヶ月近く放置していたのは、ちょうど忙しい時期と重なったから。ひと段落したので、徐ろに用意し始めています。

まずは薬品系。事前に溶かしておくのが面倒だし、思い立ったらすぐ現像したいかもしれないので粉末ではなく液体にしました。それが高くなった原因のひとつでもありますが。購入したものとその価格、そして使用量を列挙します。

1.現像液(ILFORD ILFOTEC DD-X) 1リットル 6,530円
 1:4希釈(水280ml、液70ml) 14回分 再利用化
2.停止液(富士フイルム 富士酢酸50%) 1リットル 817円
 2~4%(水330ml、液20mlで約3%) 50回分 使い捨て
3.定着液(ILFORD RAPID FIXER) 1リットル 2,990円
 1:4希釈(水280ml、液70ml) 14回分 再利用化
4.水洗促進剤(富士フイルム 富士QW) 2L用 73円
 水2リットルに全量を溶かす 5.7回分 使い捨て
5.水切り剤(富士フイルム ドライウェル) 200cc 356円
 200倍希釈 水350nlに1.75ml 114回分 使い捨て
小計10,766円

※LDDT35mmに必要な液量は350ml

あと容器と計量カップ、クリップなど。用途と価格を列挙。

再利用できる液の保管用 ETSUMI ポリエビン 500cc用 E-7045 ×3 463×3=1,389円
薬品と水の計量用 ETSUMI ポリエビーカー 1L用 E-7055 694円
薬品と水の計量用 MTI ポリプロメジャーカップ 1.0L ×2 496×2=992円
ポリエビンにいれるとき用 AZ ポリロート 90φ ×3 80×3=240円
少量の液の計量用 シリンジ2種 110×2=220円
フィルムクリップ2個セット【35mm/120フィルム両対応タイプ】 1,320円
フィルムクリーニング フォトスポンジ 2個セット 990円
小計5,845円

温度計は料理用のものを使用するため購入していません。

薬品と用品を合わせて16,611円、さらにLDDT35mmも合わせると27,591円です。

まずは前もって2リットルのペットボトルに水洗促進剤、富士QWを溶かします。
現像に際してテクニカルシートを仔細に読んだところ、ILFORD RAPID FIXERを使う場合、水洗促進剤は不要だったようです。まあ作ったものは仕方ない。それに73円なので、損失も少ない。

2025年5月14日の15時頃、初めて現像してみました。フィルムはLeica IIIfに通したKENTMERE 100。焦る気持ちと緊張感で途中の写真を撮る余裕がありませんでした。

まずはLDDT35mmにフィルムを装填します。撮影済みフィルムはベロを巻き込んでしまわないように巻き上げたので、付属のフィルムピッカーの出番はなし。
説明書をダウンロードして印刷し、順序に沿ってやっていくと、ちゃんとできたようです。中を見るわけにはいかないので、たぶん大丈夫だろう、という気持ちで進めます。

作業場所はお風呂。2分割式の蓋が台にちょうどよさそうなので、押入れから引っ張り出してきました。ぴったり。その上に希釈した薬剤を並べていきます。現像液(ポリエビーカー)、停止液(ペットボトル)、定着液(ポリエビーカー)、水洗促進剤(2リットルペットボトル)、水切り剤(ペットボトル)。その温度を手持ちの料理用温度計で測ると22.2℃。20-24℃の範囲でできるようなので、ちょうどよさそうです。

現像液のテクニカルシートによると、20℃で10分30秒。24℃で7分30秒。では22℃では、と読んでみると、

他の温度で処理する場合は、温度が10℃下するごとに指定された現像時間を10%ずつ増やし、温度が1℃上がるごとに指定された現像時間を10%ずつ減らします。

という記述。20℃で10分30秒、630秒なので、21℃なら-10%で567秒、22℃ならさらに+-10%で510秒、8分30秒。念の為、逆に24℃で7分30秒、450秒なので、23℃なら+10%で495秒、22℃ならさらに+10%で544秒、9分4秒。あれ?計算が合わない。まあ、現像過多になるよりはちょっと足りない方がいいかな、と8分40秒ですることにしました。

タブレットで現像手順を解説した動画を再生しながら進めていきます。

まず現像液を注ぎ、蓋をしてバックルで止めて撹拌1分。その後は1分ごとに10秒撹拌してトントンと気泡を取り除き、50秒静止。その繰り返しで8分40秒。よそ見をしていて1分ごとでないことも2度ほどありました。
テクニカルシートによると

最初の10秒間にタンクを上下に往復 回反転させ、さらに1分ごとに最初の10秒間にタンクを 上下に往復4回反転させます。攪拌した最後に、タンクを作業台でしっかりと叩き、リール内に閉じ込められている可能性のある気泡を取り除きます。この攪拌方法は、定着液でも同様に行います。推奨現像時間の終了10秒前に現像液を排出し、すぐに次の処理液でタンクを満たしてください。

とあるのですが、ムラになることを恐れ、最初は1分撹拌してみました。

現像液をポリエビンに排出するときに、液が排出される場所を勘違いして盛大こぼしました。少し焦るも、停止液を注ぎ撹拌。30秒くらいだった気がします。停止液を排出し、次は定着。
現像と同じ感じで撹拌とトントン。こぼすことなくポリエビンに排出できました。この時点でLDDT35mmの蓋は外してしまっています。像は見えませんが、黒っぽいのでちゃんとできているんじゃないかな、と期待が高まります。
予備水洗を1分し、不要みたいだけど作ってしまったので水洗促進剤を入れて1分撹拌。そして水洗10分。最後に水切剤を注ぎ入れ30秒撹拌し排出。
LDDT35mmを分解し、フィルムを取り出します。現像できています。でもちょっと濃い気がするな。
不要部分を切って、上下をクリップで止めて干します。

備忘録もかねて、リストにしておきます。

KENTMERE 100 22.2℃
現像8分40秒 (ILFORD ILFOTEC DD-X)
 1分撹拌、以降1分ごとに撹拌+トントンの繰り返し
停止30秒くらい (富士フイルム 富士酢酸50%)
 ずっと撹拌
定着5分 (ILFORD RAPID FIXER)
 1分撹拌、以降1分ごとに撹拌+トントンの繰り返し
予備水洗1分
 流水
水洗促進剤1分 (富士フイルム 富士QW)
 ずっと撹拌
水洗10分
 流水
水切剤30秒 (富士フイルム ドライウェル)
 撹拌して排水
クリップで挟んで乾燥

乾燥はお風呂のドアを締めて2時間くらいだったと思います。6コマごとにカットして撮影。都合、3種類の50mmレンズを使って撮影したのですが、わりと描写が異なります。NIKKORがものすごくシャープでコントラストも高い。

いくつか写真を掲載しておきます。

信楽 ELMAR 50mm F3.5
新世界 NIKKOR-H・C 5cm F2
OBP INDUSTAR-22 5cm F3.5

ひとコマだけ気になるものがありました。下のように、一部が真っ黒です。最初でも最後でもないのだけれど、現像液に触れていないところがあったのかもしれません。

現像ミスかな

気になるコストを計算してみます。
再利用可能な薬剤があり、それが何回使えるか判らないのではっきりとしたことは言えませんが、20本現像できるとして薬剤だけ(10,766円)をコストとして考えると、1本538円。うーん。現像してもらうと1,300円くらいなので、まあ安いけれど、それ自体が楽しいとか、撮影したその日に現像できるスピード感に価値を感じて自家現像するのはいいとしても、安くしたいという理由だけなら、もう少し安い薬剤を使うのがいいかもしれません。ミクロファインとスーパーフジフィックス-Lにするとか。

薬品、用品、そしてLDDT35mmも含めて27,591円、22本現像してやっとペイできる金額です。少なくとも、それくらいは現像してみたいと思います。そこまで行けば、また見えてくるものもあるでしょう。