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9.また悩む11.ペンタックスMX入手


最近、すごくフィルム・カメラが魅力的に思えるのだけれど、その理由というのは何なのだろうと考えてみた。それは単純に考えると、どこかにも書いたように、質感、操作性も趣味性の高さと画質のよさである。しかし、さらに考えてみると、私は今持っている2台のデジカメを基準として判断しているということに気付いた。要するに、フィルム・カメラに私が所有するデジカメにない美点があるだろうという予測に基いて「フィルム・カメラが欲しい」と言ってるのである。


デジカメを使っていて思うのは、そのラチチュードの狭さである。白飛び、黒潰れがすごく多いのである。もちろん、私の腕が悪いというのもある。ほとんどデジカメ任せのAEで撮影しているので、光の具合を見てある程度の調整ができたら綺麗に撮れていた場面もあるだろう。しかし、いくら露出補正をしても撮れない場面というのがある。少しの明暗差があるだけで、青空は白く飛び、暗い部分は黒く潰れてディーテイルが描かれない。デジカメの撮像素子(CCDやCMOS)だけではなくフィルムにもラチチュードの限界があるので、どうしても無理な場面というのは存在するにしても、デジカメのそれはあまりに人間の目よりも狭すぎて、印象的な場面を残せない場合が多いと感じる。

それから、色の抜けがあまりよくない。自然な色合いよりも少し誇張された鮮やかな色合いが好きだという嗜好がさらに悪く影響しているのだが、「こんな色だったっけ?」ということがよくある。青空はもっと青かったし、木々はもっと瑞々しかったような気がするのだ。もちろん、デジカメの個性もあって、私が使っているオリンパスのデジカメは穏やかな色合いにしてあるようだ。対して、富士写真フィルムのデジカメは、鮮やかな色になるらしい。ただし、ノイズが多くなるという弊害が生まれる。同じデータから、色合いに多くを割くか、解像感に割くかということのようだ。


質感に関しては、全然期待していなかった。質感がなくても壊れなければいい、くらいに思っていた。しかし、C-2020ZOOMのズーミングする時の音などは、「大丈夫かな?」と心配になってくるほどである。バッテリ残量が少なくなってくると、その音はさらに心配させるようなものになり、途中で一拍置くこともある。普通は「ウィーーーン」という感じなのが、「ウィー、…ウィーン」というふうになることがあるのだ。しかも、カメラが傾いていたりすると、レンズ付近から「カタカタッ」と何かにひっかかっているような音がすることもある。C-14000XLはプラスティックだとすぐに分かる質感で、大きさのわりに軽く、ズームの音もうるさいが、不安になる要素はない。私は思うのだが、質感がなくともある程度の剛性感は醸し出す必要があると思う。ラチチュードはC-1400XLよりは広く、操作性も比較的いいC-2020ZOOMをあまり好きになれない原因は、質感、剛性感のなさにあるように思う。


操作性については、「3.デジカメ使用感」を読んでいただきたいが、どちらにしても褒められたものではない。

まだまだ未熟な製品なので、まぁこういうことがあっても仕方ないと思う。購入する時も上記のようなことは知識として持っていた。だから、はじめは「まぁ、仕方ないよな」と思っていた。「これで腕を磨こう」と。


デジカメに嫌気が差してきた最大の理由は、これらの状況を打破しようという動きがないことである。撮像素子の画素ピッチの狭小化によってラチチュードはどんどん狭くなり、操作性を高めようというメイカーは少ない。今年中にも500万画素を越えるだろうが、撮像素子のサイズは相も変わらず、2/3型が最大なのではないだろうか。そんな撮像素子で満足できるカメラを作ることができるのか? というマトモな意見は誰も聞いていないらしい。もちろん、デザインと数値上の画素数はすごくキャッチーだし、それだけ見て買う人がいる以上、その人たちに向けた製品を作るのは、仕方ないことだろう。しかし、そればかりというのは、ユーザーを舐めているという以外にどう解釈すればいいのか、私には分からない。エンスージアスティックとまでは言わないにしても、メイカーとしての意地をかけたデジカメを作らないのは、すごく哀しい。それとも、リーズナブルなデジカメに画質を求めてはいけないのか?


だから、私もCanonのEOS D30という、30万円もするデジタル一眼レフに魅力を感じている。レンズやメディアは別売なので、揃えると40万円は下らないカメラである。これは質感も高いし、ラチチュードも比較的広い。でも、私のようなアマチュアが40万円のカメラを買うのは、いささかバカらしい。やはり、高くとも15万円くらいであって欲しい。デジカメというのは、美点の多いカメラなので、フィルム・カメラに負けないような熟成したカメラになって欲しいと思うのだが、大きな撮像素子の価格が暴落でもしない限り、事態が好転するようなことはないような気がする。


クルマの世界におけるTVRのようなデジカメ・メイカーの登場を切に望んでいる。


2001年3月8日